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元スレURL 「「たいせつなきみ」」 概要 寝そべりぬいぐるみの村で だめシールばかり張られる寝そべりちかっちは… 元ネタ:絵本「たいせつなきみ」 タグ ^高海千歌 ^渡辺曜 ^高坂穂乃果 名前 コメント
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このページはこちらに移転しました せつな雪 作詞/20スレ591 作曲/21スレ119 1 青い空が見えない 灰色の雲と雪 積もるだけしか出来ない お前は俺と同じ 雪の上に書いた 君の名前が消えてゆく あの日からすれ違い 初めての冬が来て 埋もれていく記憶と俺 死ぬのが先か忘れるのが先か 凍りついてく涙と俺 君はどこかでメリークリスマス 2 街の光見えない 雪雲に覆われて 空に降る俺の心 もう地上には帰れない あの日の嘘は君の為 後悔はしてなくて 「それでも…」に続く言葉は いつも言わなくて 願いだけが希薄な俺 曖昧ですぐ だけどいつまでも 辿り着けず想いの俺 君はどこかでメリークリスマス 音源 せつな雪はただいま管理人の手元にありません。持っている方くださいな。 (このページは旧wikiから転載されました)
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コダマ名 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 属性1 属性2 スキル1 スキル2 必要アイテム せっちゃん 80 50 90 60 90 50 420 無 - 真イーブイマスター - せつなカード せつな 120 70 105 90 115 60 560 無 - 真イーブイマスター 愛する人とともに 霊珠 Dせつな 110 65 130 75 130 50 560 無 水 真イーブイマスター 愛する人とともに 守りの霊珠 Eせつな 100 90 85 115 90 100 580 無 雷 愛する人とともに マジカル☆ぬこせつな 奇跡の霊珠 Tせつな 105 85 115 75 105 75 560 無 理 真イーブイマスター 法の申し子 技の霊珠 せっちゃん せつな Dせつな Eせつな Tせつな スキル 1.真イーブイマスター 全ての属性のスペルが属性一致扱いの威力になります。 2.愛する人とともに スキルに「愛する人のために」を持つコダマが手持ちにいると、状態異常にかからなくなります。 3.法の申し子 戦闘中のコダマのスペルの追加効果発動率が5%上昇します。 4.マジカル☆ぬこせつな スペル攻撃時、5%の確率で相手を怯ませます。 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 せっちゃん せつな Dせつな Eせつな Tせつな フィロヒートヘイズ 炎 物理 60 100 10 10%の確率で、相手を火傷にします。 初期 初期 初期 初期 初期 グランツレラージェ 雷 特殊 70 100 15 先攻で攻撃します。 15 15 15 15 15 セドナヴィアベル 水 特殊 60 100 15 数ターンの間、相手のHPとVPに継続してダメージを与えます。 20 20 20 20 20 ルナノーチェ 闇 変化 - 200 10 相手を混乱させます。 - 30 - - - クーアプロフェシー 理 特殊 100 - 10 使用から2ターン後のターン冒頭に攻撃します。ダメージはその場にいるコダマのステータスで決定します。このスペルは属性、装備、スキルの影響を一切受けません - 40 - - - フロワフルー 氷 特殊 90 100 30 10%の確率で、相手を凍らせます。 - 50 - - - ブルーメンブラットセーレ 樹 物理 90 100 25 急所に当たりやすいスペルです。 - 65 - - - エピックオブイーブイマスター 無 特殊 120 200 30 - 禁呪 - - - ノイアコーダ 無 特殊 80 100 5 20%の確率で、相手の攻撃を1段階下げます。 - - 30 - - ウィルリスラヴィーネ 氷 特殊 80 100 25 - - 40 - - ラッセルドゥテール 地 物理 80 100 20 - - 50 - - ノナヴァーグ 水 特殊 90 100 30 - - 65 - - シュタールアスピーダ 鋼 変化 - - 20 先攻で使用します。使用時のVPにより、使用ターンのみ回避率が上昇します。(3/4以上:+1000、3/4未満:+2倍、1/2未満:+20) - - 禁呪 - - マジカル☆六法全書 無 物理 70 100 10 30%の確率で、相手を怯ませます。 - - - 30 - マジカル☆あいむそー 雷 特殊 90 100 30 20%の確率で、相手を麻痺させます。 - - - 40 - せっちゃんなうなう 雷 変化 - - 5 自分のいずれかの能力が2段階上がります。 - - - 50 - 女子力炸裂ケーキ 無 変化 - - 50 味方全員のHPを、各自の最大HPの20%回復します。 - - - 65 - ねこみみ暴走ダンス 無 特殊 100 100 20 相手の属性によりダメージが変化しません。 - - - 禁呪 - セーレプリエール 樹 変化 - - 5 味方全員の状態異常を回復します。 - - - - 30 シャンテロワ 無 特殊 80 200 10 30%の確率で、相手を混乱させます。 - - - - 40 アーチェルブレイク 炎 物理 90 100 25 20%の確率で、相手を火傷させます。 - - - - 50 ローペンタグラム 理 特殊 100 100 25 20%の確率で、相手の特攻を1段階下げます。 - - - - 65 ヴァールハイトワルツ 理 特殊 140 80 60 - - - - 禁呪 カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ せつなカード スペルで与えるダメージが10%上昇します。 せっちゃん
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せつなと祈里と祈ること 「祈里ちゃん!ステップがワンテンポ遅れてるわよ!」 「は、はいっ!!」 「せつなちゃんも動作が遅れてるわ!もっと体を動かして!」 「はいっ!!」 「ラブちゃんもっと手を上に!」 「はい!」 「美希ちゃん周りとテンポ合わせて!」 「はいっ!」 厳しい指導が絶えることなく四人に向けられる。 「はーい。それじゃあ少し休憩しましょうか」 「「「「は、はい…」」」」 休憩の合図とともに四人はその場に座り込んだ。 みんながぜーぜー言っているのを聞きながら、せつなも必死に呼吸を整える。 今日はなんだか体が上手く動かなかった。久しぶりのレッスンだったせいもあるが、原因はそれだけじゃないだろうなと思った。多分、早朝に起きて体を動かしたせいだ… 朝早く、日が昇る前にせつなは起きた。着替えて防寒し、手には軍手をはめ、スコップと昨日買った球根と花の種を持ってアカルンである場所へ向かった。 そこはステージのある広場、イースが一番最初に破壊した場所だった。 せつなはその場所をしばらく見た後、広場の周り…舗装されていない場所に行き、買ってきた球根や種を植え始めた。冬ということもあり土は固く掘るのに手間取ったり、なれない作業に戸惑いながらも黙々と手を動かしていく。 せつなは、イースとしてしてきたことの罪はどうすれば償えるのかずっと考えていた。ミユキたちには許してもらったが、それで罪が消えるわけではないし、何より自分の気持ちがおさまらなかったから。 考えた結果、破壊してしまった場所に花の種を植えようと思いついた。こんな些細なことではなんの足しにもならないかもしれない。でも、今植えておけば春になってたくさんの花が咲いて、少しでも以前のような素敵な場所に戻ってくれる気がした。 私にはこれから先時間をかけて償っていくことができない。だから限られた中で後にも残るようなことがしたかった。そう思ったから、冬でも耐えられる種類の花を店員に聞いて、その種をちゃんと育つようにと一つ一つ思いを込めて植えた。 この作業は朝だけでは間に合わないだろう。でも人に見つかるわけにもいかないから人目のつかない夜にこっそりやるつもりでいる。早くしなければ…と思っていたため、初日にしてはずいぶん長い時間作業していた。 それがダンスにまで影響してしまうなんて…残り少ない機会をこんなことで不完全燃焼させるなんて嫌だ…頑張らなきゃ。 そう考えていたら、いつの間にか休憩が終わっていた。 ダンスレッスンが終わった夜にも、朝と同じようにアカルンで移動して作業した。少し怠いけどここで頑張らないと終わらない…そう思って必死になった。次の日もまた次の日も、せつなは早朝と夜に家を抜け出し作業を続けた。 そんな無茶をしていたからか、最近は食欲もなくなってきたし体の怠さは増すばかり。でもここで立ち止まるわけにはいかない。せめて最後まで… ――――――――― いつものように早朝に起きてアカルンで移動する。もうこなれたしまった工程。ただ今日は少し寝坊してしまった。本当なら目覚ましも必要ないくらい正確に起きられるはずなのに、今日はアラームが鳴っても起きられなかった。いよいよ疲れが本格化してきたのだろうかとも思ったが、あと少しで終わるため気にしないことにした。 一心不乱に作業をしていると、次第に日が昇り始めた。そろそろ人が来てしまうかもしれないので帰るための片付けを始める。今日は雲一つないいい天気だった。こんな日にただアカルンで家まで帰るのではもったいない気がしたので、少し散歩していくことにした。 鳥の鳴く声がする。霜が降りた葉が太陽の光できらきらしている。生活感あふれる音がしだした。息を吐くと白い雲ができては消えていく。当たり前のことに、なぜか泣きそうになる。 しばらくそうやって噛みしめるように風景を追っていたら、ふとどこからか動物の鳴く声がした。それは鳥のさえずりのようなものではなく、もっと痛々しいような弱い声…せつなはあたりを見回し懸命に声の出どころを探った。そうして見つけたのは、足にけがをしている猫だった。このままここにいれば間違いなく最悪の事態になる。こんな寒さだし、何よりまだ小さなその猫を放っておくことなどできないため、せつなは持っていた道具を茂みに置くと、代わりにその猫を抱き上げて祈里の動物病院へアカルンで移動した。 「せつなちゃん。あの猫もう大丈夫みたいだよ」 「!!ホントに!?ありがとうブッキー!!」 朝早くに来たせつなを快く受け入れ治療してくれたことに本当に感謝しながら、何度もお礼を言った。 無事だという報告にホッとしたら途端に疲れを感じて、待合室に座りボーとする。 「…で、…に……だけど…いい?せつなちゃん」 「!…え、ええ!もちろんよ」 「よかった。じゃあ行こっか!」 しまった。反射的にもちろんと言ってしまったが、自分が何を了承したのかちゃんと聞いていなかった…手を握られ、引っ張るように動き出した祈里の後を行先も分からないままついていく。 しばらく歩いて到着したその場所は、教会だった。 「わたしね?たまにこうやって朝早くにここにきて祈りを捧げてるの」 礼拝堂に向かって祈る動作は、習慣化しているのがはっきりと分かる程スムーズで様になっていた。 「せつなちゃんは、こうしてお祈りしたことある?」 後ろできょろきょろしていたせつなの方をくるりと向いて聞いてきた。 「ごめんなさい…ないわ」 知識としては知っていたが神に対する概念がなかったため、祈りを捧げるということにいまいちピンとこず、今まで足を運んだことはなかった。 せつなの申し訳なさそうな表情に、祈里は安心させるようににこっと笑いながら静かに話し出した。 「わたしって、すごく引っ込み思案で、ラブちゃんからダンスしないかって言われた時も一度は断ったって話したことあったでしょ?」 「ええ。覚えてるわ」 それはせつなにとって忘れることなんてできない日。新生クローバーとして仲間に迎えてもらった日だ。 「悪い癖だけど、周りの目を気にして自分がしたいことをしたいように出来なかった。人の視線が気になってばかりで、自分のしてることを変に思われたらどうしようとか、そんな事ばかり考えてたの。ダンスやプリキュアをやってるうちにだんだんその考えは薄れていったけど」 確かに祈里は変わった…と思う。ラブや美希から、最初の頃は公園のステージで踊ることにもそわそわしていたと聞いたことがあった。今ではそんな時があったなんて嘘のように、誰に見られようがいきいきとダンスを楽しんでいる。 「…でもね、周りの目を気にしていた時でも、この祈りだけはやめたことはなかったの。祈っている所を誰に見られても構わなかった」 「…どして?」 「…それはね………祈ることは自由なことだから」 「自由…?」 「うん。自分が思い描いていることやこうしたいと願う気持ちは誰にも止めることはできないし、それは他人から非難されることじゃない。そう思ってたから。祈りたいと思う気持ちの前では、地位も名誉も資格もいらない。どんな人だって自由に願いを込めていいの。 …それと、こうやっていると、自分が本当は何をしたいのかが見えてくる気がしたから。わたしはみんなより悩んでしまうことが多い分、迷ってしまうこともあるけれど、こうやって気持ちを落ち着けて心の中を整理することで、自分なりに答えをだしてるの」 祈里の口癖である、「わたし、信じてる」という言葉は、もしかしたらそうやって口に出すことで、自分自身に言い聞かせているのかもしれない。話を聞いていてせつなはふとそんな風に思った。 「ただ、それでもどうしようもない悩みがある時は…みんなに相談するようにしてる」 「みんなに…」 「悩み事を人に話すとね?自分の考えを整理できるし、自分は一人じゃないって勇気も出てくる。それに、言葉にしなきゃ伝わらないこともあると思うから」 「せつなちゃんは、祈りたいことある?」 「ないわ」 「そう…じゃあ願いごとはある?」 私の願いだったメビウスの野望を止めることは叶った。もう私に願いなんてない… 「…いいえ」 「……せつなちゃんは、無意識に感情を抑えちゃうところがあるから、自分の気持ちにも気づけていないのかもしれないけど………願いがない人なんてこの世には一人もいないと思うよ?」 「もっと、自分に正直になってみたら?」 そう言ってこちらを見てくる顔は、いつも以上に優しいものだった。 「それじゃあ、付きあってくれてありがとう。猫さんのお見舞いすぐには無理だと思うけど、出来るようになったら連絡するね?」 「こちらこそ本当にありがとうブッキー、あの猫のことよろしくお願いします」 そんな会話をして祈里と別れたせつなは、桃園家への帰り道、茂みに置いてきた道具を拾いながら考えるように歩いていた。 最近どうもいろんな人から含んだ言い方をされる。美希にしても祈里にしても、何をもっていった言葉なのか、どうして突然教会に連れて行かれたのか、分からないことが多い。もしかしてイブの日にウエスターと話した内容を、聞かれてもはぐらかし続けていることに怒っているのだろうか。確かに悪いとは思ってるけど、もう時間はほとんどない。今更誰に何を言ったところでこの現状をどうにかできるわけではないだろう。…奇跡は二度は起きないんだから。 ラブたちには悪いがこのまま最期までシラを切らせてもらおう。そう考えていた頭の片隅で、「言葉にしなきゃ伝わらないこともある」という言葉がサッとよぎった気がした。 せつなとラブと願うことへ
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せつなとミユキと許されること 戦いが終わった。メビウスが人ではなく人間の作りだした機械だったことには驚いたし、サウラーとウエスターが復活して味方してくれたことにも驚いた。でも、本当にうれしかった。 突如としてできた高い塔もメビウスとともに爆発に呑まれ姿を消した。ラビリンスはこれから変わっていくだろう。いつか四つ葉町みたいな笑顔あふれる場所になってくれるはずだ。 死闘を繰り広げて誰もが疲労困ぱいしているが、みんな一様に笑顔だった。シフォンを無事とり戻し、世界も救うことができた。やっと終わった。ラブも、美希も、祈里も、そしてせつなも、泣き笑いになりながら抱きしめあっている。 ラビリンスの住人がプリキュアに駆け寄る。賞賛の言葉を口々にかけられあたふたしながらも照れくさそうにしている彼女たちの姿を、ウエスターはその場ににつかわしくない悲しそうな顔で見つめていた。 「どうしたの?そんな顔して」 住人に囲まれわいわいとしている輪から脱け出してきたせつながウエスターに話しかけた。 「…イース…」 「だから私はイースじゃないって…って何度このやり取りやらせる気よ。まあもういいけどねイースでも」 呆れながらもやっぱり嬉しそうな表情のせつなに、ウエスターはよくわからなくなった。なんでこんなに楽しそうなんだろう。そりゃあ支配から解放されて世界を守ることができたけど…けど… 「なあイース、お前はこの世界を救った。今の俺にはそれがどれほど価値のあるものか分かる。けどな、俺は素直に喜べない…」 「どうして?」 「メビウスがいなくなって、ノーザもクラインもいなくなった。だけどそれは…」 …それは同時にせつなに施されたウイルスの停止も不可能になったことを意味している。 処置を施したのはクラインだ。そしてそのウイルスは時限式のように体を蝕んでいく。せつなにウイルスを仕掛けたとクラインが言っているのを偶然聞いてしまってから、必死になってそのことを調べた。活字を読むのは嫌いだったが、それよりもイースがいなくなってしまうことの方が嫌だった。 うつむいて言いよどむウエスターに、「せつなはせつなだよ」と言ってくれたラブの言葉を思い出した。目の前にいる真っ白な服装の彼は、クリスマスイブの時敵として私の前に立った人でもある。見た目は大きく変わったが、こうやって心配してくれている所はあの時とまったく一緒だ。心の根底は変わることなくいつでもウエスターなのだろう。 「ウエスター」 「…なんだ」 「あの時も言ったけど、もう一度ちゃんと言うわ」 あの時ってどの時だ?と疑問に思いつつせつなの話に耳を傾ける。 「四つ葉町で私にラビリンスに戻るように言ってくれた時、それを受け容れることはできなかったけど、敵だった私を心配してわざわざ来てくれて、本当にありがとう。とても嬉しかったわ」 「ああ、そのことか」 ウイルスのことを知って、なんとかイースを連れ戻したくて四つ葉町に行った。結局、こいつの揺るぎない意志の強さに負けてしまい説得には失敗したが。 本当はあの時、力ずくでも連れて行こうと思っていた。無理やりにでもラビリンスに連れ戻す気持ちでいた。 でも、毒気を抜かれてしまった。全て分かった上でもあんな穏やかな表情をしていたから。 「私にはあと少ししか時間がないのだとしても、この状況に後悔なんてしてないわ。だって本当ならイースであったあの時に私は死んでいるんだもの。パッションになってここにいて、こんな素敵な光景を見ることができているだけで満足よ」 ドーナツをあげた小さな女の子と嬉しそうに話しているラブたち、それを見て笑っている大人たちの姿を、慈しむように見つめながらせつなは言った。つられてウエスターもそちらを見る。 まだ笑顔が不格好な人も中にはいる。けどそれも時間が解決してくれるだろう。少しずつ変わっていく様子を見守ることができないのは残念だけど、と思いながら続けて話す。 「ねえウエスター、お願いがあるんだけど」 「お願い?お前が俺に?」 幹部時代まで遡ってもお願いなんてされたことなかったような気がすると、少し驚きながら「なんだ?」と促した。 「二つあるんだけど、一つは私の体のことは誰にも言わないでほしい」 その言葉に集団をみていた顔をバッとせつなに向ける。先ほどまでのやさしい表情ではなく、真剣な顔でこちらを向いていた。 「おまえ…」 期限としてはあと三週間もない。自分の力だけではどうすることもできないから、サウラーにも事情を話してどうにかできないか相談してみようと思っていた。例えダメもとでもただ指をくわえているのは嫌だったから。 それなのにイースは誰にも言うなと口止めしている…わけがわからない… 「…おまえは死にたいのか?生きていたくないのか?」 言っていておかしなことを聞いていると思った。死にたいわけないだろ。さっきまであんなに嬉しそうにピーチたちを見ていたじゃないか。あいつらと離れたいわけないだろ。 …でも、あまりにも自分の死に潔過ぎて、今こうして目の前にイースはいるのに、地に足がついていないようにふわふわした存在に感じる。 「…そんなわけないじゃない。でも、どうすることもできないならラブたちに余計な心配はかけたくないの。悲しい雰囲気で残りの時間を過ごすのは嫌だもの」 「それに、やっとすべてが終わったんだから。水を差すようなことはしたくないわ」と言って再びラブたちに視線を向けた。 余計なこと…そんな軽い物のような言い方はやめてほしかった。人ひとりの命がかかっているというのに、なんでこいつは何よりも優先すべきことを後回しに考えているんだろう。あまりにも自分の存在をないがしろにしすぎだ。 これでは、潔いというより諦めてしまっているみたいじゃないか。世界を救うとあんなに意気込んでいたプリキュアが、自分の命はどうなっても構わないと思っているのだろうか… ………ああ、そうなのかもしれない。考えていて思った。イースはもともとキュアパッションとして蘇った。メビウスを倒し、戦う意味ももうない今、プリキュアであり続ける意味もない。ピーチもベリーもパインも、プリキュアの要素を除けばそれぞれ、ダンスが大好きでダンサーになりたくて、トップモデルを目指していて、獣医になりたい夢を持っていてと希望を持っている。 …ではイースは?プリキュアとして蘇ったイースの希望はなんだろう。イースの幸せはなんだろう 柄にもなく真剣に考えだしたウエスターだったが、「あ、あともう一つのお願いなんだけど…」という言葉に、考えを中断して意識をせつなに向ける。 「……なんだ?」 「あのね、ラビリンスのことなんだけど、この国を支えてあげてほしいの。投げ出すような形になってしまうけど、あちらの世界をよく知っているウエスターとサウラーに、楽しいことや嬉しいことがたくさんあるってここの人達にも教えてあげてほしい。私たち三人の中で一番あちらの世界を楽しんでいたあなたがきっとこの国には必要になるから。サウラーと一緒に支えてあげて」 「お願い」そう言ってこちらを見てくるイースに泣きそうになった。 なんでこいつは自分の命すら危ういのに他人の心配をするんだ。しかもこんな言い方…これじゃまるで遺言じゃないか…このままいけばそうなってしまうが、あまりにもそれらしくて、今にも消えてしまいそうな感覚に思わずせつなを抱きしめる。 「っ!…ちょ、ちょっと…!」 いきなり抱きつかれて驚いているせつなをさらに強く抱きしめた。存在を確認するように。 「…もうっ!」 少し怒っているせつなの横でウェスタ―がお腹を抱えて倒れていた。 「おい…っ!みぞおちに…膝蹴りって酷くねぇ…?」 「あんたがいきなり抱きついてくるのが悪い」 ふんっ!と倒れているウエスターを見下ろすせつなはなんとなくあのころのイースとダブって見えた。 「とにかく!私のお願い聞いてくれるわよね?」 構図がおかしい気がするが有無を言わせぬ気迫に、抵抗の意味で向けていた目線も空しく「……わかった…」 そう答えることしかできなかった。 「それじゃあ、私達は四つ葉町に帰るわ。きっとお母さんたちも心配してるだろうし。いろいろありがとう」 「ああ、僕たちはこちらに残って国の立て直しを手伝うつもりだ。しばらくはごたごたするだろうから、ひと段落ついたら連絡するよ。それまでそちらの世界でゆっくりしているといい」 せつなとサウラーのやりとり、ラブたちもウエスターやラビリンスの人達に挨拶を済ませ集まってくる。 「それじゃあ、ほんとにありがとー!」 笑顔いっぱいのラブの言葉とともに、せつなはアカルンで四つ葉町の公園を指定した 光に包まれて消えていく瞬間、せつなは見送るウエスターとサウラーに笑顔を向けた ――――――― 「ただいま――っ!!!」 大きな声でラブが玄関を開ける。少しもしないうちにバタバタと音がして二人が走ってきた。私たちの無事な姿に目を潤ませて駆け寄ってくるあゆみと圭太郎。もみくちゃにされながらみんなで笑いあった。 …それからはあゆみの手料理や圭太郎の肉じゃが、ラブとせつなの好物が所狭しとテーブルに並んでプチパーティーが始まり、もう隠す必要もないのでシフォンやタルトも楽しそうに食事をした。 もうすぐ日付が変わる頃、せつなはベランダにでていた。 ラブは戦いのこともあって早い時間に寝てしまった。タルトとシフォンもだ。お母さんとお父さんも私たちが無事に帰ってきたことで気が抜けたのか、いつもより早い時間に寝室へ入っていった。 今、この家で起きているのは自分だけ。物音一つしない家に、さっきまでのプチパーティーは嘘だったんじゃないかと思うほど。 …本当に嘘みたい。メビウスの野望を止めて、ラビリンスの人々を解放して、シフォンを助けて、誰一人欠けることなく帰ってこられた。 良かった…本当に。ラビリンスに行く時にラブは守ると誓った。お母さんには少し怒られてしまったけど、ちゃんと約束を守れた。 私の願いはメビウスを倒してシフォンを救うこと。願いは叶った。約束も守れた。もう何も思い残すことはない。そう…なにも…… あ、でも、ミユキさんにはまだイースのこときちんと説明しきれていなかったな。 あの時はかいつまんでしか説明する時間がなかったからちゃんと言いに行こう。ちょうど明日の午後からみんなで会うことになっている。その前に一対一で話を聞いてもらおう。 許されるためではない。これは置き去りにしていい問題じゃないから。私がしてきたことを伝える事は、やり残してはいけないことだ。 私はもうイースじゃない。でも、イースであったことも、してきたことも今でも思い出せる。私がいなくなるまでに、その罪を償うために何ができるんだろう… 「すみません。お呼びだてしてしまって。来てくださってありがとうございます」 「いいのよ。今日は一日オフだし午後からみんなに会う予定だったんだから」 ちゃんと話そうと決めた翌日、朝早くにミユキに連絡をとった。みんなで会いに行く午後とは別に、一対一で話がしたいので10時に公園に来てほしい。と 「よかったわ。みんな無事に帰ってきてくれて。ありがとう。この世界を救ってくれて」 その言葉に奥歯をグッと噛みしめる。 「…ありがとうなんて…言わないでください。私にはそんなこと言ってもらう資格なんてありません。その言葉はラブたちに言ってあげてください。本当に頑張っていましたから」 何かを耐えるようにそう言うせつなに、ミユキは悲しい表情になる。 「…あの、私の話を聞いてもらえないでしょうか?聞いていて怒りをぶつけたくなったらいつでも殴ってもらって構いません」 「……わかったわ」 せつなは自分がイースだった頃にしてきたことを話した。何度もトリニティのライブを襲った理由、ラブと仲違いさせようとしていたこと、任務のために、友達として迎えてくれていたラブをずっと騙していたこと。そしてイースの最期まで。全部話した。 「羨ましかったんです。ライブ会場でたくさんの人が幸せそうにしていたのが。ダンス大会でラブたちが楽しそうにしていたのが。憎くてしょうがなかったんです。だからすべてめちゃくちゃにしてやろうと思って、ドームを破壊しました。その後はさっきも話した通りです… 本当に、申し訳ありませんでした。」 今できる最大限の謝罪の気持ちをこめて頭をさげた。言えた。ちゃんと最後まで伝える事が出来た。気を抜くと体が震えだしてしまいそうだったけど、なんとかこらえて言い切った。もうひと息だ。 「…そう。事情はよくわかったわ」 「最後まで話を聞いてくださってありがとうございました。あの…一つお願いがあります。謝罪しておいてお願いと言うのも虫が良すぎるかもしれませんが……今話した通り、ラブたちは私に騙されて友人として行動を共にしていました。私に対しての怒りは十分承知の上ですから、これからは私との関係は切っていただいてかまいません。ですが彼女たちにはこれまで通りに接してあげてほしいんです。それが私からの最期のお願いです。どうかよろしくお願いします!」 「ちょ、ちょっと待って!」 せつなが最後の願いだと言って頭を下げたことに驚いてしまった。この子はほんとに…なんというか一直線だな。と内心苦笑いする。 待ってと言われたことに、せつなは自分の願いが聞き入れてもらえないかもしれないと慌てた。 私のせいでラブたちがこれから先ダンスを教えてもらえなくなったら最悪だ。それだけは避けたい。 「っ!…あの、ラブたちは私がしていたことを止めようと必死で、ライブ会場も観客も守っていました!彼女たちは何も悪くありません!恨むのは私だけにしてください!!ラブとの関係を…終わらせないでください…そのために私にできることがあるなら何でもしますから!」 …お願いだから! 「待ってっていってるでしょせつなちゃん!まったくもうっ!私はこれから先もラブちゃんたちのコーチはしていくつもりだし、普段の付き合いも辞める予定はありませんっ!!」 ぷくっと頬を膨らませながらそう言ったミユキにほっとした。よかった…私が原因でこれ以上誰かが仲違いするのは嫌だ。みんなには笑顔でいてほしい。 「それに、せつなちゃんとの関係も終わらせるつもりはありません!」 「………え…」 ミユキのその言葉にせつなは驚きで目を見開いた。今何と言った?ラブたちだけでなく私との関係も終わらせない?そんな…嘘だ。私は到底許されないことをしたんだ…そんなはずは… 「嘘じゃないわよ」 せつなの反応を見て、ミユキは心を見透かしたように言った。 「どう…して…?」 「どうしても何も、私がせつなちゃんとのつき合いを終わらせたいなんて思ってないからよ」 「どうして?だって私はあんなにひどいことしたのに…!」 訳が分からなくなって敬語も忘れて疑問をぶつけた。なんで?どうして? 「そりゃあ、イースがしたことはたくさんの人に迷惑をかけたし、危ない目にも何度かあった。ライブを中止させられたことは今でも少し怒ってる…」 「なら…」 「…ねぇ、今私の目の前にいるあなたは誰?町を破壊していたイースという女の子?…違うでしょ?あなたはせつなちゃんよ。何事にも精一杯に取り組んで、真面目でがんばりやで、他人のことを思いやれるやさしい子よ」 「で、でも、私がイースだったことに変わりはないんですよ…?」 「そうね。私も目の前にいるのがあの頃の、町を破壊することに疑問もなかったイースだったら、許してはいなかったわ。 …でもね、せつなちゃんだから。目の前で謝ってくれたのがせつなちゃんだったから私は許せると思ったの。 せつなちゃん。人は変わっていくのよ。私がこうして気持ちを変えられたように、あなたも変わっていけるの。いいえ、こうして反省できているのだからもうとっくに変わっているわね………………それとね…私はあなたのこと大好きよ。覚えておいてね」 そう言ってミユキに抱きしめられた。 …許してくれるのか?こんな私を。 憎悪をぶつけられたまま終わるのだと思っていた。そしてそれは当然のことだとも思っていた。でも、ミユキさんはこうして私を抱きしめてくれた。私はイースではなくせつなだと言ってくれた。 「ぅ…ぐすっ……あ、りがとう…ござ…います…」 たまらずに涙がこぼれてきて、嗚咽をあげながらでは言いにくかったけど、今の気持ちを言葉にした。 ……あの後いったん家に帰り、今度はみんなで会いに行った。午前中のあの憂鬱とした気分が嘘のように足どりが軽い。 みんなはまだ私とミユキさんが仲直りできていないと思っていたので、二人で楽しそうに話をする光景を見て驚いていた。 カオルちゃんのドーナツを食べながら、ラビリンスに行ってからの事を話した。 「じゃあ、えーと、ウエスターとサウラー?も仲間になってくれたのね?」 「そうなんですよ!一緒に力を合わせて戦ってくれました!」 ラブが先ほどから嬉しそうに話している。それをみていると、こっちまで自然と表情が和らぐ。 「今彼らはラビリンスにいるの?」 「はい。あちらで復興の支援をしてくれています。本当は私も残るべきだったんですが、サウラーにしばらくこちらにいるといいって言ってもらえたので、こうしてラブたちと一緒にいます」 せつなもラブにつられて嬉しそうにそう話した。 今、彼らはどうしているのかな?昨日の今日だけどもう動き出しているだろうか… ――――――――――――― ラビリンスでは、ウエスターとサウラーが、崩壊した建物のがれきを撤去する作業をしていた。 「ウエスター、そろそろ休憩しようか」 「……ああ…」 またか…戦いが終わってプリキュアが帰ってからどうも様子がおかしい。なにか考えているかのように返事もおろそかだ。 そう思って観察していると、さっきまで心ここに非ずだったウエスターがいきなり 「ぁあああああ!もういい!うだうだ考えるのはやめだ!」 そう言ってこちらをキッと見てきた。 「な、なんだい?さっきから。疲れているのか?」 「なあ、サウラー!今は休憩中だよな?」 「あ、ああ。そうだけど…?」 「俺はさっきまでの労働で喉が渇いたから飲み物を買ってこようと思う」 「そんな宣言しなくても買ってくればいいじゃないか」 「ところで、突然だが俺は昨日から日記を書き始めたんだ」 「…は?」 何言ってんだこいつ?なんで飲み物の話をしていたのに日記の話?突然どころの話じゃないんだが。しかも活字嫌いなウエスターが文章を書くなんて…漂白されると頭までクリアになるのか? 「そしてその日記を書いたノートがここにある。俺は今からこれをうっかりここに置き忘れていく。ほんとは中は見ちゃだめだけど、俺がいない間に読もうとしたならそれはきっとどうすることもできないだろう。そして俺は飲みたいものが見つからないかもしれないからしばらく帰ってこない」 「…はあ…?」 なんだ?つまりは中を読めってことなのか?まどろっこしい言い方はウエスターらしくないしなんか馬鹿っぽいけど、本人は至って真面目なようで、こちらを見つめている。 「じゃあ、しばらく留守にする」 そう言って歩いて行ってしまった。 よく分からないけど、活字嫌いな彼が日記を書いたんだ。その内容にも少し興味があるし、読んでやるか。 そう思って先ほどまで彼が座っていた場所に置かれた日記を手に取った。 せつなと美希とわがままになることへ
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せつな雪 作詞/20スレ591 作曲/21スレ119 1 青い空が見えない 灰色の雲と雪 積もるだけしか出来ない お前は俺と同じ 雪の上に書いた 君の名前が消えてゆく あの日からすれ違い 初めての冬が来て 埋もれていく記憶と俺 死ぬのが先か忘れるのが先か 凍りついてく涙と俺 君はどこかでメリークリスマス 2 街の光見えない 雪雲に覆われて 空に降る俺の心 もう地上には帰れない あの日の嘘は君の為 後悔はしてなくて 「それでも…」に続く言葉は いつも言わなくて 願いだけが希薄な俺 曖昧ですぐ だけどいつまでも 辿り着けず想いの俺 君はどこかでメリークリスマス 音源 せつな雪はただいま管理人の手元にありません。持っている方くださいな。
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東せつな/キュアパッション 東せつな/キュアパッション概要 収録内訳・全118種+4種 収録カードリストフレッシュドリームダンス・全24種 ハートキャッチドリームダンス・全14種 Partシリーズ・全29種 スマイルシリーズ・全11種 #シリーズ・全10種 HCシリーズ・全8種 プリンセスパーティ・全4種 まほうのパーティ・全5種 プロモカード・全15種+1種 関連リンク 概要 フレッシュドリームダンス第一弾から登場。 収録内訳・全118種+4種 通常排出 105種 シリーズ レアリティ 計 フレッシュドリームダンス PS S N 計 3 7 14 24 ハートキャッチドリームダンス PS S N 計 3 5 6 14 Partシリーズ PS S N 計 3 8 18 29 スマイルシリーズ PP PS S N 計 0 3 3 5 11 #シリーズ A(PS) A(S) SPR PS S N 計 0 0 0 0 4 6 10 HCシリーズ CP PRC PS S N 計 0 3 0 2 3 8 プリンセスパーティ RR R N 計 0 1 3 4 まほうのパーティ AC CP RR R N 計 1 1 0 2 1 5
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せつなと美希とわがままになること あれからいろんな話をしたが、そろそろ大晦日…というのが始まるらしい。除夜の鐘というのを聴いたり、夜におそばを食べたり、夜中に神社にいったり…そして、新しい年を気持ちよく迎えるためにとか、一年間の罪や穢れを払うことを目的として、家中を掃除するんだとか… 「というわけで、桃園家恒例の掃除大会を始めまーす…」 微妙にテンションの低いラブの掛け声とともに家族が一斉に動き出した。あゆみも圭太郎も昨日から仕事は休みらしく、みんながみんな手に雑巾を持ったりはたきを持って家中を忙しなく動く。 あゆみは台所、圭太郎はリビングで、そしてせつなたちはそれぞれ自分の部屋を掃除する。 ラブはいつもは手を付けない押入れから掃除を始めた。 せつなは、普段から部屋をきれいに使っているためそんなに汚れてはいないが、「いらないものや使わないものとかを整理するといい」とあゆみにアドバイスされたので、その通りに動いていく。 部屋中をみる。ここには私にとっていらないものなんて何一つないことが改めて分かる。どれも思い出があって、買ってもらったり、自分が苦労して選んだものがたくさん… …いけない。これでは整理ができない。 私にとっては大切なものだが、自分がいなくなってしまった後には必要ないものが多くある。それを捨てていこう。少し心苦しいが、立つ鳥跡を濁さず。という言葉がこの世界にはあるらしい。できるだけ跡を残さないように、自分が来る前の状態に少しでも近づけておこう。そう思いながら掃除を始めた。 ……整理していったら、結局、数着の服がクローゼットに、他は学校関係の道具を除けば段ボール一箱分くらいの量になった。少し残すものが多いかな?とも思ったが、これくらいなら迷惑にならない程度だろうと思い直した。 ずいぶんと殺風景になったと思いながら部屋を見渡したあと、せつなは壁に掛けてあるカレンダーを見た。それは今年のものじゃない。体育の時間に倒れたあの日、「絶対に世界は終わらせない。」そういう思いを込めて、来年のためにとラブと買ったおそろいのカレンダーだ。あの時は自分の体のことは知らなかったから買ってしまったが…必要なかったみたい。 せつなは表紙を一枚めくった。一か月分の日付が書いてある。そこに、あの日から数えて一か月後の日にちに、ペンで斜めに線を入れる。 「……」 しばらくそれを見ていたら、隣の部屋からラブが呼んでいる声が聞こえた。 「せつな~、掃除終わらないよ助けてー」 そう言ってくるラブにクスッと笑って、「はいはい」と言いながら自分の部屋の扉を閉めた。 あまりにも部屋が散らかっていて、一人ではもう終わらないと思いせつなに助けを求めた。せつなはどうもすでに自分の部屋の掃除は終わらせたらしく、おかしそうに笑いながら手伝ってくれている。 楽しそうなせつなに少しうれしくなった。こちらに戻ってからそんなに時間がたっていなかったのに、ミユキさんといつの間にか和解していたし、クリスマスイブの時にあの場にいて、イースの正体を知ってしまった人たちへの謝罪と説明もいつの間にかしていた。「後に伸ばすのはよくないから急いだの。」とせつなは言っていたが、そのおかげで他の人達とのわだかまりもなくなった。せつなはみんなに許してもらえたことを心底驚いていたが、当たり前だ。だってせつなだもん。今までのせつなを知っていれば誰だって許すよ。 これからはもっとたくさん幸せゲットできるよ。 …ただ、少し気になることがある。イブの日にウエスターと話していたこと。ラビリンスからの帰り際、ウエスターに少し聞いてみたが、言葉を濁すばかりで教えてくれなかったし、せつなに聞いても「そうね…また今度教えてあげるわ。それより…」と言ってはぐらかされてばかりだ。美希たんやブッキーが聞いても同じらしい。 確かにメビウスとの戦いは終わったし、あの時せつなが言っていたように管理体制の話だったらもう気にする必要もないけど… 「ラブ!手が止まってるわよ!これじゃいつまでたっても終わらないじゃない!」 「うわぁあ!ごめんなさい!がんばりますっ!!」 考えていたら掃除の手を止めてしまっていたらいくせつなに怒られた。とりあえず今は早く終わらせるために頑張ろう。そう思い慌てて止めていた手を動かした。 ―――――――― 大晦日になった。なんだかみんなそわそわしている。テレビを見ても特番が多かったり、あゆみが台所でせっせと料理をしていたり、それをラブが手伝っていたり…せつなも手伝ったが、いつもと違うことばかりで驚きっぱなしだった。 夜になってみんなでそばを食べる。年越しそばと言うらしい。この日に食べるのは、健康長寿や繁栄、その他いろいろな理由があるようで、大掃除もそうだが一つ一つに意味が込められていることに驚く。この世界には私の知らないことがまだまだたくさんあって興味が尽きない… それからテレビでカウントが始まって、除夜の鐘が鳴るのを聴いた。 「今年もよろしくねせつな!幸せいっぱいゲットしよう!」 「……ええ、今年もよろしくラブ。お父さんとお母さんも、よろしくお願いします」 そして…ごめんなさい。 ―――――― 「美希―!遅れてごめんなさい…寝坊しちゃって…」 「いいわよ。それよりせつなが待ち合わせに遅れるなんて珍しいわね。遅れてくるときは大抵ラブが原因なのに」 「私も寝過ごすなんて初めてよ。もしかしてラブの寝坊癖がうつったのかしら?」 「まあ、色々あったし、お正月ってこともあって気が緩んだんでしょ。それより、今日は気合入れていくわよせつな!」 三が日が終わったころ、せつなは美希と街へ買い物に来ていた。せつなと美希はたまにこうして二人で服を買いに出掛ける。初めて二人きりで出掛けて以来、新しい発見ができるからとお互いに似合うものを探したりする。 「確か元旦に福袋?買ったって言ってたじゃない。なんでまた行くの?」 「今日は三が日も終わって、売れ残った福袋なんかが安かったり、バラで売ってたりしててねらい目なのよ!さあ、掘り出し物見つけるわよ!!」 そんな気合の入った美希の後をせつなは苦笑いしながらついていった。 「これなんかどう?せつな似合うと思うんだけど…」 「そうねぇ…あ、こっちのなんて美希に似合うんじゃないかしら?」 「え?そう?うーんじゃあ試着してみようかな」 そういって数点の服を持って試着室に入っていく美希を見送る。本当は、自分は今日なにかを買うつもりはない。少しだけ気になった服もあったが、今以上に物を増やすつもりはなかったので試着もしなかった。 美希を待つ間、なんとなくショウウィンドウから外を見る。ここ最近は天気も良くて気持ちのいい日が続いているからか、向かいに見える花屋の花たちが輝いてみえる。眩しいなあ… …あ…そうだ。これにしよう。 一通りお店を見てまわり、買い物も終わったのでカフェで一息つくことにした。 「結局せつな、何も買わなかったわね」 「ええ、今日はこれってものがなかったのよ」 「ええー、アタシが見つけたあのジャケット結構良かったと思うんだけどなぁ…」 「そう?私にああいうのは…」 「…せつはもうちょっと自分に自信を持ちなさい!」 「ええ?!」 「あんた素材いいんだから大抵の服は着こなせるわよ」 「…そうかしら…?」 せつなはいつもこうだ。自分に自信がないからなのか、自身を過小評価している。こちらが褒めても素直に喜ばない。ラブなら飛び上がって喜ぶのに… ひいき目なしに見てもせつなは可愛いと思う。体のラインがスッとしてるし、見た目も清潔感があり清楚でおしとやかにも感じる。物言いも上品だし、笑顔も可愛くてつい守ってあげたくなる。そして、……そして、いつもどこか一歩引いている。 自己主張をあまりしない彼女は、うっかりするといつの間にかみんなの意見ばかり聞いている。どこに行きたいとか、何をしたいとか、あまり言わない。そのくせ他の人の願いは何が何でも叶えようと必死になる。 あの時もそう。FUKOのゲージを一人で壊しに占い館まで行って…ゲージを壊せば助からないと分かっていたのに、シフォンのために、アタシたちのために。みんなが幸せなら自分の命はどうなってもいいと思ってしまうほどに、自身の価値を低く置いている。 ラビリンスで、メビウスのためにを合言葉にずっと言いなりになっていたからそれも仕方ないのかもしれない。自分の気持ちよりメビウスの意志を優先してきたから、自分の願いなんて持ってはいなかったし、持っていてもその望みは叶うことはなかった。そして、叶わないことは当たり前だと思っている… そんなせつなだから、他人より余計に気にしていなければいけないと思った。だから、自分で選ばせるように服を買いに行ったり、行きたい場所も彼女の意見を意識して聞くようにしている。せつなに、願いは叶うのだと教えてあげたいから。 「ねぇせつな」 「なに?美希」 「アタシ思うんだけど、せつなはもうちょっと自分から求めていってもいいと思うの」 「?どういうこと?」 「解りやすく言うと、もっとわがままになりなさいってこと」 「わがままに…?」 「そう。何がしたいとかもっと主張しなさい。四人で遊びに行っても行きたいところあまり言わないし、言ったとしても迷う時は必ず自分が引くじゃない。我慢なんてしなくていいのよ?」 「私は我慢してるつもりはないんだけど…」 私は今とても幸せだ。だってみんなが笑顔でいるんだもの。これ以上の何かを望むなんて私には過ぎたことだ。 「うーん…せつなには、自己主張度が足りないわね」 「…自己主張度って何よ?」 「そうねぇ…例えて言うなら、もっとラブみたいになりなさいってこと」 「私がラブに?…無理よ。いろんな意味で」 「全てにおいてラブのようになれってことじゃないわ。もっと感情を表にだすの。ラブを思い出してみなさい。あの子裏表がないからいつも喜怒哀楽がはっきりしてるじゃない。あのくらいわかりやすく…もっと言うならあのくらいバカになりなさい」 「…美希って…分かってたけどバッサリ言うわね」 「それせつなに言われたくない…」 「え?」 「ええー…」 自分で自分の性格は分かりづらいのかもしれないが、せつなの物言いはバッサリどころじゃないと思うのだけど…まあ、せつなは天然というか鈍感だからなあ。自分のこととなると特に。 「まあいいわ。とにかく、もっと気楽に物事を考えるのことね」 「気楽に…」 「……せつなが思ってるほど、世界はそんなに複雑じゃないかもしれないわよ?」 「?…言ってる意味がよくわからないわ…」 「ふふっ…分からないなら自分でじっくり考えることね。…それともう一つ」 「まだあるの?」 「…自分を大切にして」 「…」 どこかで聞いたようなセリフだとぼんやり思った。一瞬思い出そうとしたけど頭の隅に追いやって考えるのをやめた。自分を大切にするなんて、どうしたらいいかわからなかったから。 …帰宅後、せつなは自室に戻り、机の引き出しを開けた。そこには宛名の書いた封筒や便箋の他に元旦にもらったお年玉が入っている。ポチ袋の中を確認するとそれをポケットにしまい、今度は机の上に置いてある貯金箱を手に取った。そこには今までにせっせと貯めたおこずかいや、お手伝いのお駄賃が入っている。そのお金もほとんど持って、せつなはアカルンで今日行ったあの服屋の路地裏を指定した。 誰にも見つかっていないことにほっとしながらせつなは向かいの店へ急いだ。そこは今日ショウウィンドウ越しに見た花屋で、そこで、持っていたお金で買えるだけの球根と花の種を買った。 「せつな。今日の美希たんとの買い物どうだった?」 みんなで夕食を食べている時ラブに今日のことを聞かれた。 「とても楽しかったわ。美希なんてこの前福袋買ったばかりなのに今日もたくさん服を買ってて驚いちゃった」 「あははっ、美希たんらしい。あれ?せつなは今日は荷物なかったけど買わなかったの?」 「ええ。なかなかいいのがなくって」 「そっか。じゃあまた今度みんなで行こうね!」 「ええ。そうね」 「あーあ。あたしも行きたかったなあ」 「あなたはまだ冬休みの宿題終わってないからだめっていったじゃない」 「ひどいよ!お母さんのケチー…もう…それで…」 その今度は…きっと来ないだろうけど… さっきのラブに言葉に、沈んでいくような思考しか出来なくなっていたせいか、持っていた箸がするりと手を抜け、床に落ちた。 「あっ…!」 「大丈夫せつな?」 「大丈夫、少しボーとしてただけだから」 声を掛けてくれたラブにごまかすように笑いながら、落とした箸を拾って流しに持っていく。 「一日お出掛けしてて疲れたんじゃない?今日は早めに寝るのよせっちゃん」 「うん。分かったわお母さん」 「そうだよせつなー、明日は久しぶりにミユキさんにダンス教えてもらうんだからしっかり休んでおいてね!」 「もちろんよ。私も楽しみなんだから」 楽しみだな。本当に… せつなと祈里と祈ることへ
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続、せつなの捏造クリスマスイブの話 ウエスターが去って行ったあと、再び沈黙が流れる。せつな以外ウエスターがここにきた目的が最後まで分からなかったし、シフォンはやはりメビウスの手に渡ってしまっていた。それに、どうやらせつなはあのイースと同一人物らしい。シフォンの現状を知ったことの悲しさや、事実を知ってしまった人たちの困惑で誰も何も言えなくなってしまう。 そんな中、沈黙を破る声がした。 「ねぇ…せつな…」 ラブが、先ほどまでつかんでいた腕を離しせつなに呼びかける。表情は下を向いていてわからないが、少なくとも楽しい雰囲気でないことは確かだ。 「…なに?ラブ…」 「ウエスターと何の話をしてたの?さっきは結局教えてくれなかったよね?」 上手くはぐらかせたと思ったんだけどなぁ…やっぱりラブは侮れない 「ラビリンスの管理体制の話よ。私がイースからパッションになったことで、データの書き換えが行われるみたいね」 「…嘘」 「嘘じゃないわ。管理できない人間がラビリンスにどのくらい不都合があるか分からないから今の状況を偵察しにきたみたい」 「…じゃあ一か月がどうとかって話は?」 「前のデータの書き換えにそれくらいかかるみたいね。ウエスターは馬鹿だから内情をぽろっと言っちゃったのよ。でもそれだけ時間があればイレギュラーとしてラビリンスの隙をつけるわ」 …これでかわしきれるだろうか。ツッコミどころ満載の言い訳だが、これから大事な戦いなのだ。私のことがマイナスになって戦闘に影響でもでたら大変だ。 そんな風に考えていると、それまでずっと下を向いていたラブが顔をあげて私をまっすぐにみつめた。ラブの目に私の顔が映る。その目に映る顔はいつもと変わらない。ただ、ほんの少しだけ表情が硬かった。 「…わかったよ。せつな。あたしせつなの言ったこと信じる」 「ちょ、ちょっとラブっ!いいの?!」 「ラブちゃん…」 ラブが信じると言ってくれた。その言葉に美希と祈里は驚いている。三人にはきっと私がなにか隠していると感じ取ったのだろう。それでもラブは私の話を本当のこととして受け取ってくれた。ただ、その表情は納得なんてしていないようだが。 「美希たん、ブッキー、今は一刻も早くシフォンとこの世界を救いに行かなきゃいけないんだよ。だから…」 …だから、今は何も聞かない。全てが終わったら話してほしい。言葉にはしなかったけどせつなの目にそう訴えかけた。 「ラブ……そうね。アタシたちが今やらなきゃいけないことはメビウスの野望を止めることよね」 戸惑っていた美希だが、ラブの言葉を聞いて気持ちを切り替えた。ただ、 「せつな…あとで覚えてなさいよ」 そうせつなに向けて声を掛ける。あんたアタシたちに隠し事なんていい度胸じゃない…そんな副音声も聞こえた気がした 「……」 ちょっと憂鬱になった。 「せつなちゃん」 心なしかテンションが少し下がった時、祈里に名前を呼ばれる。 「なに?ブッキー?」 「……」 ただ私を見つめてくるだけの祈里にどうしたんだろうと不思議に思っていると 「……わたし、信じてる」 それだけを口にした。 そんなやり取りをしている間、ミユキは混乱した頭をどうにかしようと必死になっていた。 せつなちゃんがあのイースだって…?何の冗談だ。真面目でひたむきなせつなと破壊的な印象のあのイースは似ても似つかない。 コンサートやダンス大会をめちゃくちゃにされた。せっかくがんばって練習していたラブちゃんたちも、その成果を存分に発揮することができなかった。悔しかっただろう。私だってコンサートに向けて幾度となくレッスン、リハーサルを積み重ねて本番に臨んだ。プロとして応援してくれるお客さんにいい加減なパフォーマンスは見せられないと思ったから。そういったいろんな想いを会場と一緒に破壊していったイースには、怒りを覚えている。それは今でも変わらない。 でも、ラブちゃんたちがプリキュアだと私に言ってくれた少し後に、新しい仲間だと言って紹介してくれたせつなちゃんは、本当にいい子だった。ダンスをするのは初めてだと言ったけど、三人に追いつかんばかりのスピードでどんどんうまくなっていった。まるで乾いたスポンジのように教えたこと以上を吸収し、私ですら目を見張るその成長スピードに驚きを隠せなかった。なによりも、一生懸命さが伝わってきた。真剣にダンスを学ぼうとする彼女の姿勢は、コーチをしている身としては本当に嬉しかったし、そういう子に教えるのは楽しかった。ダンスだけじゃない。普段の生活で触れ合っていても、その性格の良さは全身からあふれ出していた。 ……一体、どちらが本当の彼女なのだろう? ぼうっとしながらせつなを見る。それに気づいた彼女と目があった。せつなは少し戸惑った後、とても、とても悲しそうな顔をして 「ミユキさん…私は、トリニティのコンサートやダンス大会をめちゃくちゃにしていたイースです。ダンスを教えていただいていたのに、恩を仇で返してしまいました。許してもらおうとは思っていません。ですが、謝らせてください。本当にすみませんでした。」 そういって深く頭を下げた。この言葉にラブは息をのむ。今まで話していなかったのは申し訳ないと思っていたが、タイミングがあまりにも悪い。 「………」 せつなから直接イースだと言われた。謝られた。怒ればいいのだろうか。罵ればいいのか。でも、目の前で頭を下げているせつなの顔に、今にも抱きしめたくなるような感覚もある。ごちゃごちゃした感情で、なにもいえないまませつなを見つめることしかできない。 「ミユキさん…!あのっ!せつなは確かに敵だったけど、それには理由があって!!」 「そうですっ!!コンサート会場を襲ったことも本当に反省していて…!」 「その事を気にしてミユキさんにダンスを教わるのも断ろうとしていたんです!でも私たちがそれを説得して…!」 なにも言わないミユキにラブが慌てて説明するのを、続けて美希と祈里が必死にフォローする。 「ラブ、美希、ブッキー、ありがとう。でも…いいの」 その三人のフォローを静かに止めるせつな。 「っ!!」 ラブが何か言いたげだったがそれを遮る。 「理由なんて関係ない。例え今プリキュアだったとしても過去に私がイースとしてこの町を襲っていたことに変りはないわ。そんな人間許せるわけないし…」 「許されるなんて思っていない」そう思いながらラブたちに言った言葉は、自分の心の中で反響して消えない。そう、これは罰だ。 ラブちゃんたちが必死に私に何か言っている。せつなちゃんを庇っている。それでも何も言えないでいたら、せつなちゃんがそれを止めて私に許してもらえるはずないと言った。…待って、待ってほしい。許さないだろうなんて決めつけないで。まだ事実を受け止めきれていないの。整理しきれていないのだ。時間が欲しい。考える時間が。 「ねえ、みんな。とりあえず一度お家に戻らない?」 それまで沈黙を保っていたあゆみが、ゆっくりとそう言った。 「ずっと外にいるでしょう?みんな体が冷えているだろうし、いろいろあって疲れているだろうから一度落ち着いた方がいいと思うの。」 「そうだな。まずそれぞれ家に帰って今後のことを考えよう」 あゆみに続き圭太郎もそう言う。 たしかに、ここに集まってもらってからずいぶんと時間がたってしまったし、驚くようなことがたくさんあって…事実を知ってしまった人たちに必要なのは、時間だった。 それから、その言葉に同調しそれぞれの家へと帰っていく。イースだと分かってしまった以上、あゆみたちと一緒に家に帰るのはどうなのかと戸惑うせつなの手を、ラブはしっかりと握り桃園家へと歩いていく。 「それにしても…ラブとせっちゃんがプリキュアだったなんてねぇ」 「ほんとに驚いたぞ」 「いやー、それは…黙ってたのは悪いと思ってたんだけどね?…」 家に帰ってきてとりあえず一息つくためにお茶をいれてから、リビングのソファに座っていると、同じく座っているあゆみと圭太郎にそう言われて、ラブもたははっ…と苦笑いしながらプリキュアになった話なんかをしている。 その間、せつなはまともにあゆみと圭太郎の顔を見れずに膝の上のマグカップを見つめていた。恐れていたことが起きてしまった。自分がイースだとばれてしまった。家族と言ってくれたやさしい人たちを騙していたことの後ろめたさと、これから大好きな人達に拒絶されてしまうことの恐怖を考えると、ひどく気持ちが沈んでいく。今までそんなこと思わなかったのに、今ではこの空間に息苦しさを感じる。 いや…でもこれは相応の罰じゃないか。幸せを奪っていた私には拒絶されるだけの正当な理由がある。公園でウエスターと話をした時、今までの関係は諦めようと腹をくくったじゃないか。…しょうがない。パッションになってからの生活があまりにも幸せすぎて、手放すのが惜しくなってしまっていた。私はキュアパッションなのだ。過去の行ないを悔いるなら、命を懸けてこの人たちの笑顔を守ることが、今の私にできる最大のことなんだろう。 まずは、ラブの話がひと段落ついたら謝罪しよう。 そう一人で結論づけて、せつなはマグカップに入っているお茶をちびちびと飲みだした。 その様子をあゆみはそっと窺う。 ラブに紹介される前、あの丘でせつなを見かけた時、その思いつめた顔につい声を掛けた。なんだか放っておけない気がしたから。そのあとラブに紹介され、一緒に食事をして、家に来ないかと誘った時、「幸せになってはいけない気がする」と彼女は言った。こんな少女が何を思ってその言葉を口にしたのか。驚いてしまった。でも、「ひとつひとつやりなおしていけばいい」とあの時言った言葉は、間違っていなかったのだと改めて思った。 今年になってから町を襲う怪物が現れだして、同時にプリキュアも出現して、その戦いは度々テレビ中継されていたから知っている。中継を見ていてたまに怪物に指令を出している人も映っていた。その中には女の子もいた。ラブと同じような年齢の、銀髪で、刺すような目が印象に残っているイースという子。ここ最近は見かけなくなったが、それがせつなだったとは… …あれ?ということはラブとせっちゃんは最初敵同士だったの?敵すらも丸め込んでしまえるラブの力量に親ながら舌を巻く。うちの子は本当にすごいわねと親ばかなことを思った。 イースがしていたことは確かに間違っていた。ただ、それを悔いプリキュアとして町を守るために戦ってきたのだとしたら、せっちゃんは十分にやりなしができている。お手伝いをよくしてくれるし、料理も必死に覚えようとして、少し遠慮するところは今も変わらないけど、せっちゃんが家族として来てくれたことで、笑顔が増えた。ラブも以前以上に毎日が楽しそうだし、それは私もお父さんも感じている。 …だからそこまで自分を追い詰めないでほしい。そう思った。 ラブは、プリキュアになった経緯とともにせつなについて話をした。いままでちゃんと言えなかったが、どうやって仲良くなったのか、どんな出会いだったのか、そして、イースのことも。 ラブが一通り話し終わると、せつなは意を決したように立ち上がりあゆみと圭太郎に深く頭を下げた。 「あの…今まで黙っていてすみませんでした。ここに来る前は、私はイースとして町を襲っていて、ラブたちと戦って、そのあと寿命で死にましたがキュアパッションとして生まれ変わって、ここに御厄介になっていました。家族といってくれていたのに、暖かな家庭を壊していました。謝って済む問題じゃないと思います。でも、これから世界を救うためにラブと一緒にラビリンスに行くことを許してください。ラブは私の命にかえても守りますから!」 「せつなっ!」 命に代えてもと言われてラブは怒りを覚えた。どうして守る中に自分を入れていないのか。いつもいつもせつなは自分自身を大切にしない。それがすごく腹立たしかった。 「…せっちゃん」 せつなの言葉を聞いたあゆみはいつもの穏やかな風ではなく、厳しい表情だった。 怒っている。お母さんが…口に出してお母さんとは呼びにくくなってしまったけど、心の中では変わらずそう呼ぶ。せめてそれだけは許してほしかった。 お母さんがおこるのも当たり前だ。家族として迎えた者が実は町を破壊し苦しめていた張本人だったんだから。 あゆみは立ち上がりせつなの正面まできた。手が上がる。殴られてしまうのだろうと思った。そらさずにいようとしたけどたまらずに目を閉じた。 …くるはずの衝撃は思っていたのとは違うものだった。 抱きしめられた。強く強く離さんばかりの力で。 「…あ…」 驚きで思わず声が出た。抱きしめられるとは思わなかった。温かい。体温だけじゃない、あゆみの想いまで伝わってくるみたいで泣きそうになる。 「ねえ、せっちゃん」 抱きしめたままでせつなに話しかける。 「…はい」 「せっちゃんが今までどれだけ大変な思いをしてきたか少しだけど分かったわ。いっぱい辛いことがあったのね。それを投げ出さずに後悔して、一生懸命にやり直そうとしているのはとても偉いわ。 でもね…やり直すために自分自身を置き去りしては意味がないの。 もっと自分を大切にして。あなたも私の大切な娘なのよ?それはいつまでも変らないわ。」 こらえきれずに涙が出た。私をまだ娘だと言ってくれた。こんな私を家族だと思ってくれている。いいのだろうか。こんなに幸せをもらっても。抱えきれないくらい大切な想いが溢れてくる。 「…ごめんなさい……ありがとう…お、お母さん…」 震える声でお母さんと呼んでみた。抱きしめる力が強くなった。 ラブも私に抱き着いてきた。お父さんもみんなを囲むように抱きしめる。 ああ、私にはもったいないくらいの幸せだ。この幸せを守りたい。いや、守ってみせよう。そしてまたラブとこの家に帰ってくるんだ。 そう固く決意した。 せつなとミユキと許されることへ
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ラブとせつな【1】(50話保管) ラブとせつな【2】(50話保管) ラブとせつな【3】